非磁性Sb(111)表面の電子が磁性を示す証拠を発見
- タイトル:Sb(111) 表面のスピン偏極バンドの観測
- 論 文:Applied Physics Letters 93, 252107 (2008)
- 著 者:T. Kadono, K, Miyamoto, R. Nishimura, K. Kanomaru, S. Qiao, K. Shimada, H. Namatame, A. Kimura and M. Taniguchi
- 機 関:広島大学、広島大学放射光科学研究センター
非磁性金属の表面にある電子が偏極しているとは誰が予想しただろう。広島大学のグルーが、 スピン偏極光電子分光というスピンを直接観測する実験手法を用いて、非磁性金属であるSb薄膜表面を観測した。金属伝導を担う自由電子のスピンに偏りが鮮明に映し出された。ニッケルや鉄のような磁性金属でなくて通常の金属でも条件が揃うと薄膜表面の電子が偏極するという基本的な性質が見いだされた。
Kadono 等の研究チームは、ナノスケールの金属Sb薄膜を作製し、金属表面のスピンと電子のエネルギー、運動量の分布を同時に計測できるスピン偏極光電子分光装置で測定した。その結果、 Sb薄膜表面の電子のスピンが偏極している様子を示すスペクトルが得られた。
電子産業の次なる分野として注目されているスピントロニクスでは電子のスピンを活用した電子デバイス開発を目指している。金属中を流れる電流の流れをスピンの向きにより制御する技術を開発している。そのため、今回の研究成果は、薄膜界面を流れる電子のスピンの偏りに関する性質を明らかにしたという意味できわめて重要な意味をもっている。
研究グループは、金属薄膜のもつ基本的な性質をより詳細られるように実験装置のさらなる高分解能化を行い、異なる金属についても研究を進める予定である。