セミナー・シンポジウム

HiSORセミナー

レーザー離散円偏光変調によるキラル物質の高速光イメージング分析

日時 2023年6月9日 (金) 15:00~16:00
場所 広島大学放射光科学研究センター 2階 セミナー室
講師 成島 哲也
(文部科学省 初等中等教育局)

生体や結晶等の物質の内部には,ナノからマイクロメータまでのスケール階層に渡り,多様なキラリティが発現している。このキラリティには,単なる組成分析では得られない,機能や特性に直結する情報が含まれる。しかし,溶液を対象にした従来の円二色性(CD)計測法には,円偏光照射部に原理的な問題があったため,固体試料等のキラリティを分析,可視化する技術は,長年夢のものとされてきた。我々はこの問題を回避できる,信頼性の高い円偏光照射法(レーザー離散円偏光変調)を考案し,それに基づきCDの顕微鏡を最近実現させ[1],(固体を含む)キラル物質のイメージング分析を高い空間分解能で進めている[2]。これまでにキラリティに関するいくつかの新しい知見が得られている[3,4,5]が,現在,この顕微CD計測法のポテンシャルを試すべく,磁性やスピントロニクス[4],医療診断,天文学分野等への展開を視野に入れたナノキラル光科学に関する研究も進めている。

[1] Sci. Rep., 6, 35731 (2016), 特許第6784396号,特願2021-029181号,PCT/JP2022/005014.
[2] J. Phys. Chem. C., 117, 23964 (2013), ACS photonics, 1, 732 (2014) 等.
[3] ACS Nano, 14, 12918 (2020), Chem. Eur. J., 25, 6698 (2019), 生物物理, 59, 035 (2019).
[4] Nature 613, 479–484 (2023).

問合せ先 松尾光一(放射光科学研究センター)