セミナー・シンポジウム

HiSORセミナー

日時 2025年1月20日 (月) 14:50 ~ 16:20
場所 広島大学放射光科学研究所 2階 セミナー室

QST 関西研の超高速ダイナミクス研究の紹介

講師 板倉 隆二
(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

量子科学技術研究開発機構(QST)関西光量子科学研究所(関西研)は、高強度フェムト秒レーザーの開発とそれらを用いた基礎研究および応用研究を行っている。関西研全体を紹介した後、(1)極短パルス光源開発、(2)超高速分光計測、(3)時間依存密度汎関数法をベースとした理論研究、の3つが強く連携して進めている超高速電子ダイナミクス研究プロジェクト研究について簡潔に概観する。

高強度フェムト秒赤外レーザー開発とその水の窓軟X線発生への応用

講師 石井 順久
(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

高強度フェムト秒赤外レーザー開発とその水の窓軟X線発生への応用 要旨: 近年高強度フェムト秒レーザー技術の進展により、物質に強電界を印加することが可能になり、極端な非線形効果が発現するようになった。極端な非線形効果の一つとして挙げられるのが高次高調波発生で、レーザーの一部出力が周波数上方変換される。

本セミナーでは、高出力化が著しいイッテルビウムレーザーを励起光源とする波長2000 nmの高強度赤外レーザーの開発とそれを用いた水の窓領域(炭素K吸収端280 eVと酸素K吸収端540 eV間のスペクトル領域)を超える高次高調波発生を紹介する。

高次高調波は時空間共にコヒーレンスが高く、アト秒(10-18秒 2023年ノーベル物理学賞)からフェムト秒(10-15秒)の時間分解能を有し、既存の放射光施設と相補的な軟X線光源として応用が期待される。

位相制御2色レーザーパルスを用いた電子再衝突誘起分子解離過程の観測

講師 遠藤 友随
(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

基本波と2倍波の重ね合わせで得られる位相制御2色レーザーパルスは、基本波と2倍波間の位相差に依存した非対称な電場波形を示す。非対称電場に対する電子や分子の応答を調べることで、強レーザー場中での解離反応の物理機構を解明する足掛かりを得ることが出来る。本研究では、強レーザー場中のOCS分子の解離における電子再衝突励起過程の寄与を調べるために、位相制御2色レーザーパルスと光電子-光イオン同時3次元運動量計測を組み合わせた実験を行った。観測された光電子の運動量分布は2色レーザー場の位相差(レーザー電場波形)だけでなく、同時に観測されたイオン種(OCS+とS+)にも依存することが明らかとなった。光電子分布の位相差およびイオン種依存性は、電子再衝突過程を考慮した古典軌道モンテカルロ(CTMC)シミュレーションによって再現することができた。以上の結果は、電子再衝突過程によって生成した励起状態のOCS+から解離が進行していることを示唆するものである。

問合せ先 黒田健太(先進理工系科学研究科)、出田真一郎(放射光科学研究所)